どうやったら理解のレベルを落とさないで早く読むことができるか、そして読んだ内容をできるだけ記憶しておけるかについて説明します。
ここでは、特に英語のmaterialを想定しています。
(コンテンツは、特にアメリカで使われている方法論を数多くリサーチし、その結果を実践面から検証した情報に基づいています。)
まずは、あなたが読むとき何がじゃまをするか?を考えてみましょう。
なぜ、読むスピードが下がってしまうか?その原因は、主にこの3つです。
1.一つ目は、Fixation、つまり「立ち止まりグゼ」と呼ばれるもの。読んでいて、視点が一か所に留まる現象です。誰でもFixationはすると思いますが、その頻度と長さが問題です。例えば、一行12WordsくらいのSentenceを読むのに6回Fixationすると、一度の目の動きでたった2Wordsしか認識していないことになります。と考えると、Fixationしても、回数が少なければ、(つまり、Fixation一回につき認識Words数が多ければ)問題ないということです。あなたもお察しの通り、Fixationは「一度にどれくらいの単語数をProcess(理解)できるか」と深い関係があります。ちなみに、Speed Reading講座などで必ず出てくるClichéに、”Expanding your vision span will help you read fast”がありますが、これま正に「一度に認識できる単語数を増やしましょう」ということだと思ます。(但し、View rangeを無理に拡大して、物理的にViewできる単語するが上がっても、Proceed(理解)していなければあまり意味ないので注意が必要です!)
2.二つ目は、Regression、つまり「戻りグセ」です。これも、誰もがやることです。ただ、これも頻度によります。親しみの強い情報を読む場合ならRegressionの回数は少なくなります。一方、” Beyond Good and Evil, by Friedrich Nietzsche” (fri:drik ni:chae)(哲学の本!)を読む際には、「この本は、今年中に読み終えることができるのか?」と自分を疑ってしまうほどRegressionを繰り返すかも知れません。一見でプロセスできない場合は不安になって二度見、三度見するのでRegressionを繰り返すことになります。Native speakerがRegressionを繰り返す原因を、”Lack of concentration”としている場合がありますが、私たちNon-native speakerのRegressionの原因は、少し異なり、「知らない単語が含まれている」、「馴染みが無い文の構造が使われている」、「馴染みのない概念が含まれている」など、英語と内容に関するFamiliarityが原因の場合が多いと考えられます。
3.三つ目はSubvocalization、つまり「声に出すクセ」です。これは、日本語でもよくやりますね。例えば、新しく買ったIT gadgetのManualを即座に理解しようと、口の中でブツブツ言いながら読む。このクセの何が悪いのか?「声に出さなくては読めない=読のスピードよりも速く読めることはない」ということになります。黙読は音読の数倍のスピードが出せるので、これも“何とかしたいポイント”となるわけです。
それでは、この後、これらの問題をどうやって解決して行けばいいかを考えます。
それでは、いよいよ実際の方法論を解説します。
さて、3つのクセの解決法を考えたいんですが、それには、まず「Readingとは何か」、「読んでいるとき、頭の中で何が起こっているのか」を理解/確認することが必要です。
読むという行為は「本などから文字を拾い、それらをつなげて理解するプロセス」ではありません!実は、もっと能動的な行為です!ちょっと意外ではないですか?
実は、Verification(検証)がReadingの正体です。つまり、何かを“検証”しているんです。何を検証しているのか?あなたの頭の中に既にある、その本に関連する知識や情報を検証しています。例えば、バイクの修理をしたことがある人が、車の修理をしようとするとします。(実際には、危ないのでやめた方がいいですが!笑)実際に始める前に、車のメカニズムに関する本を読んでおきます。きっと、バイクの修理で得たエンジンのしくみに関する知識や車体の構造に関する知識が助けになるでしょう。ただ、バイクと車とはかなり異なる点が多くあります。この人は、どうやってその知識上のギャップを埋めたのでしょうか。そうです!既存の知識をベースに、“仮説”を構築しました。彼/彼女が車の本を読むのは、自分の仮説を確認するという行為だったのです。
(ついでながら・・・実は、この“仮説作り”はについては私たちは日常的にやっています。料理(例えば、スペイン料理とイタリア料理)、スポーツ(バスケットボールとサッカー)、音楽(クラシックとロック)、ダンス(バレーとジャズダンス)・・・)
例がずいぶん長くなりましたが(笑)、結論としては、Readingという行為は、「本から文字を一つ一つ拾って解釈する」というような受動的な行為ではなく、「既に自分の頭の中にある仮説を検証する」という能動的な行為であることが理解されたでしょうか。
ということは、Readingを早めるためには、①できるだけ広い分野の知識を蓄積しておくこと、②仮説構築能力を向上させておくこと、が重要です。(これは、Linguistic(言語学)の分野でも証明されていることです。(例えば、Huber (2003), Müller-Christ & Weßling (2007) などの実験)また、➀や②のことを言語学(教育学)などでは、Scaffoldingと言います。Scaffoldingは、元々は工事現場の足場のことですが、言語学などでは比喩的に「学習上目的(例えば、英語の本を読む)の達成を助けるための行為(例えば、周辺知識を与えておく)を指します。)
次に出てくる3.5 Step Readingも、Reading=Verificationという考え方にかなったFast/er readingの方法です。
実際の工事現場のScaffoldingです!
3 Step Readingをご説明します。このままではないですが、ESL(English as a Second Language 英語教授法)でも使われる方法です。
先ほどの「本の内容を知っているほど、読むのが早い」と符合したやり方です。本の長さによりますが15分~30分でできます。
Step 1.まずPreviewです。読みたい本(や記事)の「のぞき見」をします。例えば、通りかかった書店で3分で“立ち読み”する感覚です。Previewというくらいなので、実際の本の本文を読む前の段階です。(映画のTeaserを思い出して下さい。Keyになるシーンが次々と現れて、Plotが完全に理解できるわけではないけれど、何となく言いたいことがつかめる感じです。)
まずは、表と裏のカバーをチェック。カバーをめくって、折り返しをチェック。目次をチェック。何となくどんな本か分かりましたか?自分が既に持っている関連知識を総動員して何とか頭の中に本の内容の“地図”を描いてみて下さい。
Step 2.次は、実際に本の中身を見てみます。Step 1で意味のある作業ができれば、この後のプロセスはかなり軽くなります。Overviewですから、本で言えば、各Chapterの内容を3行くらいで把握するイメージです。
まず、各Chapterの最初と最後の数行を読みます。Chapterが細かく分割されていたら、更にもう一歩踏み込んで、それぞれのSectionのTitleをチェックします。グラフやチャートが出てきたらタイトルだけチェックします。
当然このStepが済んでも、本の内容が100%理解できるレベルまで達しません。もしかしたら、30%くらいかも知れません。全く問題はありません。過去に読んだ本でない限りそれが普通です。
Step3.さあ、実際に読んでみましょう。
後で、この3Step readingを更に進化させたバージョンを紹介します。お楽しみに!
もし読んでいるのが、本ではなく、もっと短いもの(新聞や雑誌記事)の場合は、Step 2のみを試して下さい。
この4 Step ReadingのBenefitsは主に4つあります:
➀最初に30分使ってOverviewすれば、読まなくても良い本(記事)を避けることができる
②複数回触れることで、本の内容を記憶する機会が生まれる
③(インタビューなどで)クライアントの発言を先読みできる(→次の質問/Dig-deeper questionsを準備する余裕が生まれる)
④クライアントの意図を類推できる(多くのクライアントは、理路整然とは話してくれいないもの)。特に③と④は、Problem-solverのあなたには是非磨いて頂きたいSkillです。
PreviewもOverviewも、基本はBig pictureから始めて、次第に地上に降りてくるイメージ。
ちなみにこれはResearchなどのときにも共通します。最初から詳細な情報の洪水を頭に入れると“Analysis paralysis”(細かい分析ばかりに気が行って鵜動きが取れなくなること)に陥る可能性が高くなってしまいまうので注意が必要です!
いくら早く読めても、内容を理解していないのでは全く意味がありません。また、せっかく得た情報や知識なので、それをできるだけ長く記憶しておきたいものです。
ここでは、Readingをするときに理解を助ける方法とReadingによって得た知識や情報をRetain(保持)しておく方法を説明します。
読む対象物の構成を把握していれば、読む際にも役立ちます。どこにどれだけ有用なことが書いてあるか知っているので、Focusの絞り様があるからです。前のSectionでは本を扱いましたが、今度は私たちProblem-solverがリサーチなどで比較的良く読む類のマテリアルを考えてみましょう。
まずは、Magazine類です。これは本に近い構成になっているので先ほどのTechniqueが使えます。
次にNewspapersです。日本語でも英語でも、新聞は本や雑誌とは異なって構成になっているのは、読むとすぐに気づきます。“重要な情報、急を要する情報”から先に使えています。情報の量(文の量とは限りません)からすると、このような逆立ち三角形の構造をしています。これを、Upside-down pyramid構造と呼びます。Plato(パレイトゥ)の法則のように、最初の20%の文書が80%の情報を伝えています。
新聞の中でもOp-ed(語源は、opposite the editorial page)は、通常の記事と内容も構成も異なっています。これも比較的“通常の文書”に近いかも知れません。IntroductionとConclusionがあることが多いので、最初は、タイトルとその2つを読めば内容をかなり推測することができます。また、Op-edは、時勢に関係のある内容が多いので、その日より少し前の新聞記事全体を眺めると更に楽に内容を推測できます。
3 Step Readingの進化版です。特にProblem-solverのあなたにお勧めします。Memory activationの機会となり、リーズニングや仮説構築トレーニングとしても有効です。また、そのSkillは、クライアントインタビューなどで“先読み力”として威力を発揮するでしょう。
時間は、3 Step Readingより少々長く30分くらはかかりますが、トレーニングと捉えればその価値はあると思います。
Step 1.(3 Step Readingと同じです。前のSlideまで戻らなくてよいように同じことを再掲します)まずPreviewです。読みたい本(や記事)の「のぞき見」をします。例えば、通りかかった書店で3分で“立ち読み”する感覚です。Previewというくらいなので、実際の本の本文を読む前の段階です。(映画のTeaserを思い出して下さい。Keyになるシーンが次々と現れて、Plotが完全に理解できるわけではないけれど、何となく言いたいことがつかめる感じです。)
まずは、表と裏のカバーをチェック。カバーをめくって、折り返しをチェック。目次をチェック。何となくどんな本か分かりましたか?自分が既に持っている関連知識を総動員して何とか頭の中に本の内容の“地図”を描いてみて下さい。
Step 1.5 この新しいStep、特に、Problem-solverのあなたにはお勧めのステップです!
1)Step 1で思い浮かんだ事柄をもとに本の内容をAssumeします。“仮説”を立てるわけです。「こんなちょっとの情報しかないんじゃあ、仮説なんて無理だよ!」 そう感じるかも知れません。自分が既に持っている知識からの類推を使いましょう。(その場合は、自分の仮説だと分かるようにマークしておきましょう。2.5のStepで修正/肉付けします。)
(すごく大雑把な話ですが・・・笑)特に日本で教育を受けた人は傾向的に“絶対的正解”を探そうとします。アメリカで生活/仕事をしてみると分かるのですが、彼らはじっくりと考えた上で“自分なりの正解”を導き出してきます。時と場合によるので、どちらのアプローチが優れているとは決められませんが(そうは言っても、例えば、医療機器/Medical deviceなどの製造過程/Production processは、是非、前者的アプローチでお願いしたいところです!笑)、この場合は、後者で行きましょう!私たちProblem-solverがreal-world/実世界で問題に直面するとき、「クライアントの経営層から話が聞けるのは30分しかないが、とりえずSolution/解決方法の方向性くらいは出してくれ」とリクエストを受けることはめずらしくないからです。このStepは、こうしたReal-worldでの仮説構築のトレーニングとしても有効だと思います。
2)次に、1)で頭に浮かんだ仮説をノートなどに記録します。おそらく、目次に沿って書くと、網羅的で本の流れに沿うことができるので良いと思います。また、MindmapはVisualizeに優れているしReviseや思考の拡張がとてもしやすいのでお勧めします。私もよく使います。
3)ある程度まとめた後、誰かに説明してみて下さい。ちょっと恥ずかしいかも知れませんが、家族や友人(Problem-solverでない)はよい対象です。でも、もし誰もいなかったら少なくとも声に出して説明してみて下さい。そうすると、自分の論理の抜けや思考の不自然さが明確になるのでこれもかなりお勧めのトレーニング方法です。(この効果は、Cognitive Science/認知科学のジャーナルなどでも示されています: “Research in education and cognitive development suggests that explaining plays a key role in learning…” Williams, and Lombrozo, 2009)
4)もしかしたら、あなたはここでMissing piecesがあると感じたかも知れませんね。PrereadingをしてもAssumptionを使っても埋めきれない情報の穴です。これらは、実際に読む際にSearchlightの役割を果たすので記録しておきましょう。
Step 2.(3 Step Readingと同じです。前のSlideまで戻らなくてよいように同じことを再掲します)次は、実際に本の中身を見てみます。Step 1.5で意味のある作業ができれば、この後のプロセスはかなり軽くなります。Overviewですから、本で言えば、各Chapterの内容を3行くらいで把握するイメージです。
まず、各Chapterの最初と最後の数行を読みます。Chapterが細かく分割されていたら、更にもう一歩踏み込んで、それぞれのSectionのTitleをチェックします。グラフやチャートが出てきたらタイトルだけチェックします。
当然このStepが済んでも、本の内容が100%理解できるレベルまで達しません。もしかしたら、30%くらいかも知れません。全く問題はありません。過去に読んだ本でない限りそれが普通です。
Step 2.5 Step1.5で作ったまとめ、あるいはMindmapを更に肉付けしてみましょう。
1)一つ前のStepで新たな情報が付加されました。それを“地図”に付け加えます。Availableな情報が増えた分、仮説も拡大できますね。
その分野にどれくらい馴染みがあるかによりますが、このStepまで行うと「果たしてこの本は、じっくりとあと数時間をかけて読む価値があるのか」がある程度分かるようになります。
Step 3.さあ、実際に読んでみましょう。
もし読んでいるのが、本ではなく、もっと短いもの(新聞や雑誌記事)の場合は、Step 2のみを試して下さい。
(以下の説明は、3 Step Readingと同じですが、前のSlideまで戻らなくてよいように同じことを再掲します)
この5 Step Readingのbenefitsは主に4つあります:
➀最初に30分使ってOverviewすれば、読むべき本に時間を集中することができる。(読まなくても良い本(記事)を避けることができる)
②複数回触れることで、本の内容を記憶する機会が増える
③(インタビューなどで)クライアントの発言を先読みできるようになる(だから、次の質問/Dig-deeper questionsを準備する余裕が生まれる)
④明確に話してくれなくてもクライアントの意図全体を類推できるようになる
特に③と④は、Problem-solverのあなたには是非磨いて頂きたいSkillです。
あなたも日々使っているかも知れませんね・・・
それでは、実際には、毎日どんなトレーニングをすれば良いのでしょうか?そのヒントです!
今度は、ちょっとtacticalな(テクニック的な)方法をご紹介します。最初に出て来たFixationとRegressionを抑制するのが目的です。
1つ目は、指やペンを使う方法です。読みながら視線を指で誘導します。自分がComfortableに読めるスピードよりもちょっと早め(引っぱりぎみ)の方が良いです。きっとあなたはこの説明を聞いて「でも、そんな簡単なことでスピードが上がるなら苦労はない!」と思われたかも知れません。それは理解できます。実は、私もそうでした!ところが、やってみると数10%はすぐに早くなります。FixationやRegressionを強制的に減らすからです。Speed readingに関する多くの情報(本や講座など)を調べてみても、この方法について触れていないものはほぼありません。
2つ目は、単語をrecognize(認識)するスピードを上げるというものです。私も含めて、私たちのほとんどは、日本語の単語を認識する速さの方が英語(外国語)の単語を認識する速さよりも格段に速いです。それだけ母国語に対するexposureが多いので。しかも、日本語は“視覚言語”なので、“聴覚言語”である英語との性質上の開きが大きいです。その差を埋めようというのがこの2つめの方法です。昔懐かしい紙の単語帳を使って、一枚0.5秒くらいの速さでめくるのがいいでしょう。認識するのにそれ以上かかっては、実際に読むときにスピードが下がってしまいます。アプリも豊富に出ています。Ankiなどは、他人が作ったdeckを使うことができるので作成する手間が省けます。(もちろん、学習目的が同じである必要がありますが・・・)
まとめ
私たちのようなProblem-solverが読む場合、情報集めが目的である場合が多いです。この 5 Step Readingは、情報集という目的に適したReading methodだと思います。是非、試してみて下さい。もちろん、目的が近いインタビューにもこのメソッドが非常に役立ちます。
以下にこのメソッドの4つのBenefitsを再掲しておきます:
➀最初に30分使ってOverviewすれば、読むべき本に時間を集中することができる。(読まなくても良い本(記事)を避けることができる)
②複数回触れることで、本の内容を記憶する機会が増える
③(インタビューなどで)クライアントの発言を先読みできるようになる(だから、次の質問/Dig-deeper questionsを準備する余裕が生まれる)
④明確に話してくれなくてもクライアントの意図全体を類推できるようになる
特に③と④は、Problem-solverのあなたには是非磨いて頂きたいSkillです。
ご質問やコメントなど、お持ちでしたらどうぞお気軽に!
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