日本でも今後更に盛んになりそうなこのFIRE Movementについて、3パートに分けてお伝えします。
Part 1:なぜFIREムーブメントにこんなに火がついたのか?
Part 2:ギグエコノミーと多様な種類のFIREたち
Part 3:意外とできそうなFIREの実践方法
FIRE Movementとは、Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職)の頭文字をとったものです。2010年台にアメリカのMillennials(ミレニアル:1980年代初旬から1995年くらいの間に生まれた世代)の間でブログなどを通してポピュラーになりました。
いつの時代の人々の心にも「早く仕事を辞めて、悠々自適に過ごしたい」という願望があります。そういう意味で、Retire early(早期退職)という部分は、FIRE Movementに特有のものではないように見えます。
ただ、実際には、FIRE MovementのRetireの意味は、従来の「身体的にきつくてもう働けないから引退する」という意味ではありません。むしろ、「他人のために働くのを止めて、自分のために人生の大切な時間を使う」という意味だと、FIREを実践している人たちの行動を見て私は解釈しています。実際、FIREではなく、FIという”Sect”(派閥)(Choose FI)もあります。
FIRE Movementは、1990年代初頭にそのOriginが生まれました。Vicki RobinとJoe Dominguezが書いた“Your Money or Your Life” という本です。
20210年には、Jacob Lund Fiskerが書いた“Early Retirement Extreme”という本でそのコンセプトが更に明確になりました。
その次の年に開始されたMr. Money Mustacheというblogにより、FIREに同調する若者が増えました。彼は、特にFIRE MovementとFrugalityを結びつけています。直接的にFIREの本ではありませんが、Tim Ferrissの“Four-Hour Work-Week”も、FIREの動きを加速した助けになったと思います。
(筆者(私)的には、このセクションはリサーチには結構力を入れて書きました!笑)
では、なぜ、FIREの動きが若者、特にMillennialsの間で人気が出たのでしょうか。それを理解するには、まず、彼らが生まれてからどのような出来事を経験してきたかを知る必要があります。
彼らが生まれたのは、1980年台の初頭です。その頃アメリカは歴史的なRecessionの真っただ中でした。失業率も10%に近付きました。彼らは、自分の家族が職を失うのを幼い頃に目の当たりにしたのです。さらに、住む家を失うことも経験しました。トラウマを残しそうな大きなショックだったと思います。
(下記の写真のForeclosureとは、抵当として家を差し押さえられること。当然、その結果、所有権を失います。)
悪いことばかりがいつまでも続くわけではありません。間もなく景気は回復します。ただ、彼らが就職するまでアメリカ経済は大きくは改善しませんでした。更に、彼らが就職してからも、アメリカ経済にはどんよりと曇り空、あるいは雨が続きます。ただ、1990年台には、多くのIT企業が生まれ、アメリカ人の心にも光が差します。世界から優秀な人材を引き付けたのもこれらの企業です。経済をけん引する新しい勢力を生んだことは、アメリカ人にとっても誇りだったでしょう。
残念ながら、このIT boomもbust(破裂)で終わってしまいます。2000年のことです。そして、その後10年もしないうちに、アメリカはFinancial crisisを経験します。アメリカの歴史上、最大級の経済危機です。そして、その火の粉は世界中へあっと言う間に燃え広がり、その影響が津波のようにアメリカに押し寄せました。
生まれて間もない頃自分たちの親が家や職を失うのを目撃した彼ら自身が、今度は、未曽有の財政的不安定さに耐えなければならなくなったのです。
ですので、結果的に、長期に渡って働いてもなかなか富が蓄積されません。他の世代の状況と比べると明確にその様子が分かります。
下記のグラフで、Millennialsの就職期から2020年までをながめてみると、その前の4世代にくらべて、経済の成長は停滞していたとことが分かります。
ワシントンポストの調査を見ても、18才~33才の間、Boomers(ベビーブーマー)世代の資産が35%程度増加したのに比べ、Millennialsの資産は、20%程度しか増えていないことが分かります。
景気や経済とは直接関係はないですが、多感な時期に9/11も目撃しています。
このような世の中の動きに翻弄され、おそらく彼らは、「親の世代のように、会社に勤めて他人のために一生懸命働いても報われない。もっと自分の人生を充実させる生き方はないものか」と考えたのだと思います。実際、アメリカの大手生命保険会社のMetLifeの調査でも、「Millennialsの74%がフリーランスに興味あり」という結果を発表しています。この数字は、X世代の57%、その一世代前のベビーブーマーの43%と比べると非常に高いものだと分かります。
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