習慣化するしくみ
商品やサービスの開発をするとき、誰もが目指すのは、「消費者(BtoCの場合)の日常の中で習慣化して定着すること」です。
従来からの商品やサービスの開発プロセスは、おおよそ上記のとおりなのですが、さて、どこステップをどういじればいいのでしょうか?
リサーチをしてみると、「日本企業はインベンション(主に技術開発)に力をいれるが、その後の習慣定着を促進させるステップへの努力が足りない」という論を多くみかけます。つまり、”ものづくり”は大切だけれども、それだけでは、「習慣化するサービスや商品」は創り出せないと言っています。
では、優れたインベンション以外に、具体的には何が必要なのでしょう?
次のセクションでは、習慣化してる商品やサービスを思いつくままに考えてみましょう・・・
習慣化したサービスやプロダクトの例
”本当に”(笑)思いつくままに挙げてみますね・・・
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- ドミノピザ(昨日食べたので、一番に思い出しました!笑)
- 洗濯機
- 電子レンジ
- ルンバ
- スポーツジム、スポーツジム24時間Open
- インターネット
- YouTube
- Kindle
- Evernote
- コンビニ
- ボトル飲料、缶飲料
- 自動販売機
- 宅配便
- アスクル
- アマゾン(Online shop)
さて、何か共通点はあったでしょうか?
共通点というか、「習慣化したサービスやプロダクト」を他の呼び方をすると、「それが無い生活は考えられないようなサービスやプロダクト」です。この状態が成り立つためには、需要と供給側で満たすべき要件があるように思います。
例えば・・・
◆需要(消費者)側
その商品やサービスによって、下記のベネフィット(の少なくとも一つ)を消費者が実感すること:
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- 不便が減る(生活上に加えられる価値:マイナス→ゼロ)例:アスクル
- 楽が増える(ゼロ→プラス)例:宅配便
- 便利が増える(同上)例:24時間ジム
- 楽しいが増える(同上)例:Facebook、YouTube
- 生活の質が上がる(プラス→プラス)例:ルンバ
「Painを減らしてGianを増やす」的で、最初の4つのポイントは、言葉にすると当たり前に聞こえますね(笑)。最後の「生活の質が上がる」は、その商品やサービスの一次のベネフィット(主に機能的)が消費者の生活を根本的に変えてしまい、「生活の質の向上」という精神的なベネフィットまで昇華する(*)、ということなので、ちょっと次元が異なる気がします。それが、商品やサービスを習慣化させる最終的な到達地です。例を付記しましたが、一対一の対応では無いですね。
(*)例えば、アマゾンは、極端に単純化して言えば、電子カタログ販売です。ところが、1クリックで購買から支払いまで完了する快適なUX、豊富な商品数とカテゴリー、優れたリコメンデーション機能、信頼できるデリバリー、安定したサイト全体のセキュリティーなどが相まって、完全に消費者の生活の一部(ヒトによっては大部分!笑)になっています。「買い物が便利」という機能的なベネフィットだけではなく、「洗剤などの日用品の買い忘れが無くなる」「空いた時間で他のことができる」などの一層深いレベルのベネフィットをもたらしています。
ただ、習慣化まで行く前の段階では、最初は奇妙で親しみの無い、新しい概念やもののやり方、考え方を受け入れる柔軟さも、特に消費者側に必要ですね。
◆供給(企業側)
新しいサービスやプロダクトの概念が消費者の生活に入り込むために、企業側に要件として考えられるのは:
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- 時代の流れ、マクロの変化などを感じ、捉える能力
- 消費者/人間の本質的な欲求を捉える能力
- それをアイデアまで結晶させるアイデエイション能力
- それをMVPまで創り上げる能力
- 気長でしくこく消費者に受け入れてもらえるまでやりぬく(笑)マーケティング
- 消費者にトライアルをしてもらう仕組み
一方で、阻害要因となりそなのは・・・
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- 古い社会通念
これは、消費者側、企業側の両方に存在しそうです。
習慣化するサービスやプロダクトを作るには?
何しろ、企業としても、自社の商品やサービスが”習慣化”すればリカリングの収入が得られる、習慣化サービスやプロダクトは非常に魅力的です。ただ、アイデアが単純に”新しい”とか、”便利”とか、”安い”というだけでは、習慣化させるベネフィットとして足りないようです。
前のセクションでも書いたように、習慣化するための要件は多く、常に変化しているMoving partsなので、ピタゴラスの定理のような唯一不変の法則が存在するわけではありません。ここでは、習慣化サービスやプロダクトを創り出すための要件を、事例を基に帰納的に考えてみましょう!
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- 消費者を巻き込んで共創する 例:Design Thinking、MVP(この重要性は、Y-CombinatorのMichael Seibelも強調していました・・・)
- ユーザーが絶対に解決したいと感じている課題を解決する 例:「急いでいる時に限ってタクシーがつかまらない」
- 人間の根本的な欲求に関わるベネフィットを与える 例:「ヒトとつながっていたい」
- できるだけ頻繁に発生する消費者のニーズにフォーカスする 例:日用品の買い物、通勤途中の音楽
- 導入しやすくする:経済的ハードルを下げる 例:Freemium
- 導入しやすくする:機能的ハードルを下げる 例:シンプルなデザイン/設計、ちょうどいい加減のデフォルト設定、手厚いチュートリアルやトレーニング
- 試用/使用を始めてからも消費者とコミュニケーションを続ける 例:カスタマーサクセス担当
- ネットワークイフェクトを使う 例:「皆が使っているアプリだから、自分も使おう!」
- 購入後も改良を続ける 例:継続的バージョンアップやスペックアップ
- 使えば使う程価値が出る設計にする 例:デジタルノート
- (習慣化まで行かなかった場合)ダメ、嫌いな/になった理由を聞く: 例:契約非継続アンケート
一方で、もし、サブスクリプション商品/サービスだった場合、「一括で払った料金が高いから、(サンクコストだとは分かっていても)解約したくない」とか「解約の方法が複雑でできない」のような、エセ習慣化(笑)というか”強制的虜状態”は、絶対に避けたいものです!
習慣化商品/サービスに関して思うこと(Food for Thought)
習慣化するサービスやプロダクトやイノベーションについて考えていて、「先人の貢献」について思いました。
一般に、私たちは、多額の出資を受けたり、華々しくメディアで取り上げられたサービスやプロダクトに注目しがちです。ただ、当たり前ですが、その成功以前に”失敗した”例の方が多いと思います。
2021年頃からMetaverseがBuzz wordになりました。日本では「どうぶつの森」(英語名: Animal Crossing)が有名です。特にコロナが流行ったこともあり、室内でこのゲームを楽しみ、それが習慣化した人も多いです。発売から12日で1177万本が売れました。すごい!!!
ただ、この成功の20年前にセカンドライフというバーチャルワールドが存在していました。最盛期の2013年頃には、アクティブ・ユーザーが100万人程度いたそうです。(セカンド・ライフについてご興味があればこちらへ!)
If I have seen further, it is by standing on the shoulders of giants.”
そして・・・
You cannot fail unless you quit. – Abraham Lincoln
という言葉に納得です。
ご質問やコメント、アイデアなど、お持ちでしたらどうぞお気軽に!