
せっかく覚えたことは忘れないでおけると便利です。Presentationなども何も見ないでできた方が説得力が増します。また、さまざまな知識や情報を頭に保持できれば、異なる種類のアイデアが混ざり合い、Innovationが生まれる確率も高くなります。
私たちのMemoryに関して、いくつかPrinciples(大原則)があります。このListはExhaustive(完全に全ての原則を含んでいる)訳ではないのですが、ここでは、特に重要で、他の原則の基礎となっているものを3つ選んでみました。どれも言われてみれば当たり前と感じるものばかりですが、より良い記憶には必須な原則です。
1つめは、「何かを記憶しようとするとき、その意味を理解していた方がよりよく記憶できる」です。もちろん、私たちの実際の生活の中では、“意味がないもの”も記憶しなくてはならない場合があります。特に、私たちProblem-solverは、クライアントの幹部の名前を覚えたり、彼らの製品の名前を覚えたりしなくてはなりません。その場合は、他の方法もあります。
2つめは、「視覚的に記憶した方がより良く記憶できるし、その記憶を保持しやすい」です。あなたも思い当たるかも知れません。駅からクライアントの会社までを文で説明されるよりも、地図を書いてもらった方が記憶しやすいしその記憶も長期に渡って残っています。(「人間の脳にとってLocation(位置関係)は覚えやすい」と言われることもあります。)
3つめは、「記憶しようとするものを何か既に知っているものと結びつけると記憶しやすい」です。例えば、合田さんというクライアントの名前を覚えようとします。例えば、その人のがっちりしている体格を誇張して想像して、ジャイアン(ドラえもんに出てくるキャラクター)を思い浮かべれば記憶しやすくなります。(笑)
それでは、前のSlideで見た大原則からどんな具体的なtechniqueが派生しているのかを見てみましょう。ここでは、それらのtechniqueを、記憶する(Encoding)、保持する(Retention)、取り出す(Retrieval)の3つのstageに分けて考えてみましょう。
まず、Encoding stage(記憶する)です。Association(これから覚えようとするものを既に知っている情報に結びつける)、Grouping(Similaritiesがあるものを同じグループに入れる)などの方法があります。クライアントの製品をばらばらと暗記するのではなく、セグメント(例えば、“クライアントのクライアント”ごと)別に分類して覚える。ニーズに紐づけられ、“意味”が生まれ記憶しやすくなります。また、人間の脳は視覚的な情報の方が記憶しやすい傾向があります。また、文字を見ながら声に出して記憶すると、Multimodal(視覚と聴覚での複数のモードで)となるので、それだけシナプスが結びつきやすくなります。
次にRetention(保持する)Stage。できるだけ記憶を長持ちさせる(つまり、Short-term memoryをLong-term memoryに変換する)ためには、Repetition(ん~、classic! 笑)やteaching(他人に説明してみる)などの方法が有効です。これを心理学では、the protégé effectと呼びます。
最後、Retrieval(記憶を取り出す)です。Encodingのときと同じmodeを使ってretrieveした方が当然容易です。
それぞれのtechniqueを実際のプロジェクトで使うとすると、どんなツール(application)があるのでしょうか?
まず、Association。通常のAssociationは、これから記憶するものと既に持っている記憶を結びつけるのですが、ここでは、これから覚えるものどうしをつなげてstory化する方法を紹介します。
2つめは、これから覚えようとするものを共通項で括ってgrouping(整理)し、それをvisualizeする(視覚的に表す)。2つのtechniqueの合わせ技です。どんなApplicationがあるでしょうか?Problem-solverのあなた、特にコンサルティングを経験しているあなたなら、何か思い当たるものはありませんか?そうです!Problemを分解する時に使うframeworkです。Groupingすることによって、覚えようとするものに“意味”を与え覚えやすくします。
Visualizationのためのツールには、どんなものがあるでしょうか?Problem-solverの間で良く知られているものの一つに、Mind mapがあります。Mind mapを使って記録すると、情報の関係性や論理的なつながりを直感的に表現することができ、脳が記憶しやすいです。記録に拡張性を持たせられるのも大きな利点の一つです。
Visualizationを使った記憶方法のもう一つが、Memory palaceです。別名、Method of Lociです。2000年前、ギリシャの詩人が人の名前を覚えるときにパーティー会場内の位置と出席者を結びつけて記憶を助けたというのが起源と言われています。自分の想像の中で、良く知っている建物(Palace)の各部屋などに、記憶したい対象を置いていきます。予めルートを決めておけば、多くの情報をその順番で保持することができます。例えば、(メモなしで)スピーチやプレゼンのためにTalking pointsを覚えておくときなどにも威力を発揮します。
最後から2つめのapplicationです。例えば、クライアントインタビューなどで得た情報は、他人に伝えると自分自身の記憶も確かなものになります。自分や行ったインタビューの内容を(そのインタビューに参加しなかった)他のメンバーにシェアする時のことを思い出してみて下さい。あの感覚です。これは、他人が分かりやすいように解釈し直そうとして、右脳と左脳が活発に動くからからです。
最後のツール、Repetitionです。Leitner systemという方法が良く知られています。これは、Flash card(単語カード)を使って行います。覚えの悪いカードほど頻繁にreviewする学習方法です。学生の頃は、私もこの方法で単語を覚えました。(記憶の原則からすると当たり前なのですが、単語だけを単独で記憶しようとしたので、非常に効率が悪かったです!笑)また、最近ではたくさんのappsが作られています。その中でも私が使いやすいと思ったのは、AnkiというAppです。単語カードのDigital版ですが、他人が作ったものを使えたり、メモをつけたり、自己テストをする機能などがついています。
最後に、今まで紹介した、原則やTechnique、Application(ツール)をコンサルティング・プロジェクトの序盤で使うことを想定して、その流れに沿って説明します。
まず、Preparation。かなり重要なStepです。Interviewのために、自分なりの仮説を立てます。なぜなら、Interview自体は、その仮説をVerifyする場だからです。(大アタリのときも、大ハズレのときもありますが!笑)ですので、Prepがない(=仮説が無い)と、ランダムあるいは、まとはずれな質問をして相手の時間を無駄にしかねません。さらには、Interviewがあまりにも拡散してしまい、Analysis stepで結論に至る前の収束プロセスで非常に労を要することにもなりかねません。
Researchしたものをノートにまとめますが、Interviewの際にはEye contactは多い方がよいので、できるだけ記憶します。Talking pointsのようにMemory palaceを使ってもいいでしょう。それぞれのPointの詳細は、おそらく論理性のある内容になると思うので、Frameworkを使います。あなたの立てたAssumptionが自然に流れるか実際に口に出して話してみましょう(Storification and teaching)。
Interviewです。基本はPrepで準備した情報をVerifyするプロセスです。後で見た際思考の過程が追えると助かるので、インタビューで得た情報は、Prepの時につかったMind mapなどで整理すると良いです。Interviewの最中にも、キリのいいところでその時点までに聞いたことを口に出してまとめてみます。両者(Intervieweeとあなた)に得があります。あなた自身の理解を確認できることはもちろんですが、Interviewee側としては、自分が伝えたかったことが正しく伝わっているかを確認できるので安心し、あなたへの信頼感も増します。
InterpretationとAnalysisです。PrepのAssumptionと実際にInterviewで得た情報の比較が中心です。異なっている部分はなぜ仮説が間違っていたかを考えます。相手が言い間違えたりこちらが聞き間違えたということもあります。きっとそんなときは、Storificationすると無理が出てくるので気づく確率が高いです。論理的に推測して修正します。最終的には、意味のある俯瞰図にまとめます(Visualization)。おそらく、ここでもFrameworkやMind-mapが役に立つでしょう。(但し、Frameworkを主役にして、何でもかんでもそこに当てはめようとするとせっかくInterviewで得たエッジを失うので注意です!)自分なりの仮結論が構成できたらそれを口にだして話してみます(Storification)。
最終的には、Interviewを終えた時点でのあなたなりの結論を何らかの形でクライアントにPresentすることになります。Presentationの内容もできるだけ頭に入れることが理想的です。もちろんノートを使っても問題ないですが、PresentationはあくまでもStorytellingです。相手に話かける方が説得力があります。練習はAnkiなどのFlash cardを使うことも有効です。
まとめ
クライアントからもらった情報をよく理解し、分かりやすくまとめ(視覚的にFrameworkなどを使って)、これまでに経験した類似したケースに結びついて記憶する。
私たちがProblem-solverとして活動する際も、“Memorization’s principles”を意識して進めると記憶効率が良くなると思います。そして、最後の一押しは、StorificationやTeaching。何かを理解する際も、まとめる際も、自分の意見を構築する際も、人(架空でもいいです!)に説明してみるExerciseは、対象に意味を持たせ長期記憶を助けるだけでなく、自分のアウトプットの論理性や説得力を測るにも非常に有効な方法だと思います。もし、やっていないとしあら、是非、試してみて下さい。(心理学では、the protégé effectと呼ばれます)

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